その夜も酔っ払ってた
阪急神戸線・伊丹線への乗り換え口のある駅のホーム
和服姿の女性がベンチで横たわっている
遅い時間 もう電車もこないかも… どうするんだろうと思いながら
横を通り過ぎたとき いつもの変態マンピルのエログロが頭をもたげてきた
引き返し声をかける「おねえさん 大丈夫ですか?」「どこまで帰るんですか?」
妖艶な和装特有の香りがつんと鼻についた 「大丈夫ですから ありがとう」
「でもこんなところで ほんとに大丈夫ですか?」下心あるマンピル しつこく食い下がる
「どうやって帰るんですか?」 ほつれた黒髪が頬にまとわりついてたまらなく色っぽい
「ここから自転車なの だからいいですよ ありがとう」
「じゃ 僕が家まで送って行くよ 二人乗りで…」「大丈夫なの?」
酔いつぶれた彼女を支えながら駅を出た すぐ横の自転車置き場に彼女の自転車はあった
こっちも結構酔いが回っている ほんと大丈夫やろか?少し心配になった
二人を乗せた自転車はゆっくりと動き出した 夜の街を和服美人と自転車デート 腰に回されたしなやかな指 香料の香り 切ない吐息 なんて素晴らしいんだ
送って行った後の展開にドキドキしながらペダルを漕いだ
「今頃 家帰ったらやってんだろうな~」
しばらくして彼女がつぶやいた
「何やってんですか?」「博打よ~、あなた近づかない方がいいわよ」
「え!どういうこと?」
「家の主人 その筋のもんなの 今日は人を集めて家で博打をやってんのよ」
「え!え~」 えらい女と知り合ったもんだ 「しゃぶもやってるかも~」
「で、でも大丈夫ですよ 送るだけですから」って言った瞬間
急にふらついた
スロモーションのように彼女を乗せたまま自転車は路上にたたきつけられた 冷たいアスファルト
あおむけに転がっていた 暗い空が見えた あ!大丈夫やろか…
慌てて見渡す 自転車も彼女の姿もすでにそこにはなかった
悪夢が過ぎ去り暗い闇と線路の鉄さびの匂いが私を現実に引き戻した
